不当解雇通知を受けた労働者が会社と争い300万円で和解?!

2019年08月26日更新

今回の相談者は大阪に在住する働き盛りの30代男性。毎日が直行直帰の現場作業に従事していましたが,いきなり会社から解雇通知を受けてしまいました。
しかし,その解雇通知が違法・不当であることを労働審判手続きで争い,結果的には未払いであった残業代も含めて300万円で解決できた事案を紹介します。

事案の概要~弁護士との面談まで~

ある日,事務所に,『何も悪いことしていないのに,二日前にいきなり会社から「解雇だ!」と言われた。どうにかなりませんか?』と不安そうな声で相談者から電話が。
弁護士の予定が空いていたこともあり,当日にご来所いただき面談することになりました。

突然の解雇の通知は,不当解雇の可能性が高く,弁護士に相談すべきケースといえます。)

開口一番,相談者は,「なんで解雇されたのかわからない。残業代も払ってもらえていないのに。ただ,雇用契約書や就業規則,タイムカードもない会社で,それでも会社に何か請求できますか。」と。

不当解雇と残業代未払いは,会社に対して請求する法律構成が異なるため,順に詳しく聞いていくことにしました。

不当解雇について

まず,弁護士は,雇用契約書や就業規則がなかったとしても,口頭でも雇用契約は成立するので,不当に解雇された場合に争うことが可能であると説明しました。
そして弁護士が,「解雇に思い当たる節はありますか?」と尋ねたところ,会社からは,「業者とのトラブルが原因だ。」とだけ言われたとのこと。
相談者自身としては,業者とトラブルを起こした認識はなかったため,正直何のことを言っているのかさっぱりわからないとのことでした。
そこで,弁護士から,「最近,仕事中に何かしら業者とかかわったことはありませんでしたか?」と尋ねました。
すると,相談者は,「業者とかかわったといえば,つい先日,現場で仕事を受けている大手の業者さんに車を移動してほしいと伝えたことぐらいしか・・・」とのこと。
詳しく聞くと,現場で作業する場所にその業者の車が停まっており,作業するのでいったん移動してほしいと伝えただけだと。ただ,伝えはしたものの,業者がなかなか車を移動してくれなかったので,結果として作業を終えるのが少し遅れることに。
弁護士は,もし会社がこの業者とのやり取りを理由に解雇といっているのであれば,相談者には何の落ち度もないため,この解雇は不当解雇である可能性が相当高いと説明しました。

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残業代について

弁護士から,まず「タイムカードがない会社とのことですが,働いた時間について,タイムカードの代わりになるようなものはありましたか?」と尋ねました。
相談者の回答は,「タイムカードはもちろん,日報もなく,パソコンのシステムなども含め,会社が従業員の出退勤を管理するものはなかった。」とのことでした。
そこで,弁護士は,相談者の行動から働いた時間を把握できるものはないかを判断するために,通勤手段,一日の仕事の流れなどを聞くと,次のことが明らかになりました。
・通勤手段は車,会社近くのコインパーキングに駐車(領収書あり,取り忘れた場合は手帳にメモ
・日々出社時間が異なるため,当日の朝までに,メールで出社時間の指示あり

弁護士は,コインパーキングの領収書に記載のある入出庫の時間,手帳のメモ,出社時間を指示したメールが,相談者の働いた時間,そのなかで残業した時間を証明する証拠になり得ることを説明しました。

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方針決定~依頼者の要望を踏まえて~

相談者からご依頼を受ける前に,相談者のご要望をうかがいました。
相談者が今後も会社で働き続けることを望んでいるかどうかについてです。
というのも,弁護士を代理人として会社に請求をたてることは,会社と争った従業員とみられ,現実上,働きづらい環境になってしまうことがよくあるからです。

相談者の回答は,「生活もあるのに,いきなり解雇と伝えてきた会社ではもう働きたくないです。タイムカードを設置してほしいと何度も言ったのに,結局対応してくれなかった会社ですし。未払いになっている残業代も可能な限り請求したいので依頼します。」とのことでした。

弁護士は,ご要望を踏まえて,今回の解雇が不当であることを争うとともに,未払いの残業代についても請求する方針で決定いたしました。
また,まずは会社と交渉するところから始め,交渉がまとまらない場合には労働審判や訴訟も視野に入れていくことを説明しました。
労働審判訴訟となると,交渉と比べて事件の終結時期が遅くなること,その分依頼者の負担も大きくなることから,交渉で話がまとまるのに越したことはないからです。

依頼後の弁護士の活動

弁護士は,すぐに会社に対し,本件の解雇は不当解雇であり認められないこと,また,未払いとなっている残業代約200万円を支払うよう,内容証明郵便を送りました。
未払い残業代の請求権については,法律上2年間の消滅時効,すなわち2年前に働いた分までしか請求できないため,消滅時効にかかる未払い残業代を少しでも減らす必要があるからです(厳密には,2年前以上の未払い残業代も請求はできるものの,会社が消滅時効を援用すると,請求権が消滅するという仕組みです。)

すると,会社側の弁護士から,「解雇理由証明書に記載のとおり,業者とのトラブルが解雇の理由であり,解雇は正当である。また,未払いの残業代ついては,20万円だけである。」旨の回答書が送られてきました。

残念ながら会社側の回答は,こちらの主張とは真っ向から対立する内容であったことを依頼者に報告。
このまま交渉を続けても,依頼者の要望に沿った問題解決は難しいことを伝え,労働審判手続による解決を目指すことにしました。

労働審判手続って何?

労働審判手続は,労働審判官(裁判官)1人と,労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人で組織された労働審判委員会が,個別労働紛争を,原則として3回以内の期日で審理し,適宜調停を試み,調停による解決に至らない場合には,事案の実情に応じた柔軟な解決を図るための労働審判を行うという紛争解決手続です。

◆1回目の審判

1回目の審判の日では,通常,それぞれの主張を証拠とともに書面で事前提出し,裁判官らがそれぞれの主張について判断していくこととなります。
こちらは,依頼者から聞き取った事項から解雇が不当であること,領収書やメール,手帳のメモを証拠として残業代が未払いであることを主張しました。
ただ,相手方の書面提出が審判日ギリギリであったこともあり,1回目の審判だけでは終わらず,判断は2回目の審判に持ち越しとなりました。

◆2回目の審判

2回目の審判で,いよいよそれぞれの主張について判断されることに。
はじめ,真っ向から対立していた主張も,裁判官らが間に入ることにより,徐々に整理され,基本的にはこちらの主張が認められる方向に進んでいきました。
結果として,会社側が依頼者に対して,解決金300万円を支払うとの内容で調停が成立しました。

今回のケースは交渉段階でまとまらず労働審判になったものの,不当解雇および未払い残業代の主張が概ね裁判官らに認められ,依頼者の納得のいくかたちでの解決ができました。
また,解決金の額についても,領収証やメール,手帳のメモがあったおかげで,こちらの主張内容がほぼ認められた額となりました。

最後に

雇用契約書や就業規則,タイムカードなどの証拠がないと,不当解雇を争ったり,残業代請求をできないと思いがちです。
しかし,今回の事案のように不当解雇を争うこともできますし,メールのやり取りや駐車場の領収証,手帳のメモなどから,残業時間の計算ができることがあります。
思い当たる証拠がないからといって泣き寝入りせずに,ぜひ一度,弁護士に相談することをお勧めします。

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