新型コロナウイルスが原因で会社に休業を命じられた場合の賃金・給与は??

2020年03月14日更新

新型コロナウイルスが猛威をふるっている。

テレワークや在宅勤務なんかも増えてきているようだ。

「内定取り消し」がトレンド入りするくらい,内定取り消し事案も増えてきているようだ。

なお,新型コロナによる内定取り消しについては,以下の記事を参照して欲しい。

新型コロナウイルスを理由とする内定取り消しは違法か!?

 

今回は,新型コロナウイルスを理由に会社から休業を命じられた場合,休業期間中の給与・賃金は支払われるのか!?

といった点について,解説していく。

 

youtube動画でも本記事の内容をかいつまんで解説しているので,こちらも参照してほしい。

 

休業中の給与についての法律・条文

休業中の給与・賃金については,労働基準法26条と民法536条2項(危険負担)という二つの条文がある。

労働基準法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

このように,労働基準法26条では,使用者の帰責事由による休業の場合には,平均賃金6割の休業手当を会社が労働者に支払わなければならないと定められている。

民法536条2項

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。

他方で,民法536条2項は,会社の帰責事由による休業の場合,労働者は反対給付である給与債権を失わないと定められている。すなわち,労働者は使用者である会社に対して,給与の全額を請求できると定められているのだ。

労働基準法26条(休業手当)と民法536条2項(危険負担)の関係

《強行法規か任意規定か》

労基法26条が強行法規であって,当事者間の合意で排除できない規定であるのに対し,

民法536条2項の危険負担の債権者主義の規定は,任意規定であって,当事者間の合意で排斥できる点だ。

すなわち,就業規則や雇用契約書に,会社の帰責事由いかんによらず休業をする場合には危険負担の規定は適用しないとして,ノーワークノーペイの原則を徹底する趣旨の規定をしてある場合には,労働者は,危険負担により給与の全額の支払いを請求することはできなくなってしまう。

 

《労基法26条と民法536条2項(危険負担)は両立するか》

この点,労基法26条が民法の特別規定であって労基法のみ適用されるとも考えられなくはない。

しかし,判例は,労基法26条の休業手当の規定は,民法536条2項(危険負担の債権者主義)の規定を排除するものではなく,両者は両立するものだと判断している。

民法536条2項の危険負担の規定は任意規定であって,合意で排除可能であるが,労基法26条の休業手当は強行法規であって合意で排除できない。加えて,休業手当は,付加金や罰金により履行確保がなされており,労働者をより保護するものであるからだ。

最高裁判所昭和62年7月17日判決(ノースウェスト航空事件)

労働基準法二六条「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に使用者が平均賃金の六割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定し、その履行を強制する手段として附加金や罰金の制度が設けられている(同法一一四条、一二〇条一号参照)のは、右のような事由による休業の場合に、使用者の負担において労働者の生活を右の限度で保障しようとする趣旨によるものであつて、同条項が民法五三六条二項の適用を排除するも、のではなく、当該休業の原因が民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に該当し、労働者が使用者に対する賃金請求権を失わない場合には、休業手当請求権と賃金請求権とは競合しうるものである(最高裁昭和三六年(オ)第一九〇号同三七年七月二〇日第二小法廷判決・民集一六巻八号一六五六頁、同昭和三六年(オ)第五二二号同三七年七月二〇日第二小法廷判決・民集一六巻八号一六八四頁参照)。

そして、両者が競合した場合は、労働者は賃金額の範囲内においていずれの請求権を行使することもできる。したがつて、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、賃金請求権が平均賃金の六割に減縮されるとか、使用者は賃金の支払いに代えて休業手当を支払うべきであるといつた見解をとることはできず、当該休業につき休業手当を請求することができる場合であつても、なお賃金請求権の存否が問題となりうるのである。

《帰責事由の範囲》

労基法26条(休業手当)も民法536条2項(危険負担の債権者主義)も,ともに会社側の帰責事由を要件としている。

ただ,その帰責事由の範囲については,判例・通説上,その広さが異なると解されている。

すなわち,労基法26条(休業手当)は,民法536条2項(危険負担の債権者主義)よりも帰責事由の範囲を広げて,労働者保護をより一層手厚くしたものだと解釈されている。

具体的には,民法536条2項(危険負担の債権者主義)でいうところの帰責事由がなくても,会社側の支配領域に近いところから発生する原因の場合には,不可抗力に該当しない限り,広く帰責事由に該当すると解釈されている。

 

帰責事由とは?

前述したように,労基法26条(休業手当),民法536条2項(危険負担の債権者主義)のいずれの規定においても,会社側の責めに帰すべき事由,帰責事由が要件とされている。

そして,この帰責事由は,休業手当の方が広いと解釈されている。

民法536条2項(危険負担の債権者主義)でいう,帰責事由について,具体的な基準を示した裁判例がある。

この裁判例は,会社側が休業をさせる「合理的な理由がある」など正当な事由があることを主張立証すべきとしている。

そして,その合理性の有無は,以下の事情から判断される。

使用者による休業によって労働者が被る不利益の内容・程度

・使用者側の休業の実施の必要性の内容・程度

・他の労働者や同一職場の就労者との均衡の有無・程度

・労働組合等との事前・事後の説明・交渉の有無・内容

・交渉の経緯,他の労働組合又は他の労働者の対応

 

宇都宮地裁栃木支部平成21年5月12日仮処分決定

使用者が労働者の正当な(労働契約上の債務の本旨に従った)労務の提供の受領を明確に拒絶した場合(受領遅滞に当たる場合)に,その危険負担による反対給付債権を免れるためには,その受領拒絶に「合理的な理由がある」など正当な事由があることを主張立証すべきであると解するのが相当である。

なぜならば,労働契約における労働者の賃金請求権は,労働契約上の権利の根幹を構成するものであり,使用者がした受領拒絶(受領遅滞)に責任事由がなく,賃金請求権が消滅するという一方的な不利益を労働者に課するためには,労働者の一方的に不利益な就業規則の変更を許容する法理(労働契約法10条)と同様に,そのことを正当化するために必要と解されている「合理性の要件」を判断の基礎とするのが相当であるからである。

合理的な理由を欠く使用者の一方的な受領拒絶(受領遅滞)によって,労働者の賃金請求権が消滅に帰すると解することは,明らかに正義・公平の理念に違反し,条理にも反するというべきである。

そして,その合理性の有無は,具体的には,使用者による休業によって労働者が被る不利益の内容・程度,使用者側の休業の実施の必要性の内容・程度,他の労働者や同一職場の就労者との均衡の有無・程度,労働組合等との事前・事後の説明・交渉の有無・内容,交渉の経緯,他の労働組合又は他の労働者の対応等を総合考慮して判断すべきである。

なお,この点に関し,債務者は,同旨を判示する池貝事件判決のような解釈は,ノースウェスト航空事件最高裁判決の判示に明らかに違背していると主張しているが,債権者らが主張するとおり,同最高裁判決の判示部分は,部分ストライキのため会社が命じた休業が労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたるか否かについて判示したものであり,民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」の解釈を示したものではないから,債務者の主張は,明らかに失当である。

 

新型コロナを理由とする休業での給与は?

前述のごとく,会社側の帰責事由があるのかどうかが基準となる。

会社が労働者を休業させたことに帰責事由があるならば,給与を請求できることになる。

新型コロナウイルスを事情とする場合には,会社の帰責事由はあるのだろうか?

まず,労働者が新型コロナに感染していると診断された場合には,休業させることについて,会社側に帰責事由はないだろう。もちろん,治療されて,感染拡大のおそれが無くなってまで長期間休業させるとなれば帰責事由が生じるだろう。

次に,労働者に新型コロナの疑いがある場合には,適切な機関(帰国者・接触者相談センター)により,その疑いの合理性を吟味し判断する必要があるだろう。会社が合理的な調査・判断をしないまま,漫然と疑いがあると判断して休業させた場合には,会社に帰責事由があるといえるだろう。

最後に,新型コロナに感染していない労働者を休業させる場合,会社に帰責事由があると判断されることが多いだろう。この場合,会社に帰責事由がないと判断されるためには,会社側が休業させる以外の方法がなく,休業にあたって丁寧な説明,交渉をしていないと帰責事由があると判断されてしまうからだ。

 

また,他の新型コロナウイルス関連の法律問題について,以下の記事でまとめておりますので,ご参照ください。

https://www.gladiator.jp/covid-19/

 

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